トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号)
夜叉ヶ池 (1099m 揖斐川町) 2015.8.8 晴れ 2人
駐車場・登山口(9:41)→池まで1500m地点(10:21)→幽幻の滝(10:35)→夜叉ヶ池(11:15-12:13)→幽幻の滝(12:48)→駐車場(13:44)
★8月8日に夜叉ヶ池を訪れました。
★広い駐車場から谷川を渡り、ジグザグと登ってトラバース道へ。
★アップダウンを繰り返しながら美しいブナ林を歩きました。
★様々なキノコやホトトギスの花を見ながら、大小の谷を渡って、幽玄の滝へ。
★目の前に夜叉壁を見上げながら、ロープ場の岩登り。
★真夏の太陽の下、暑さにバテながら稜線に出て、夜叉ヶ池に到着。
★鏡のように空を映す夜叉ヶ池は、夏の緑に包まれて静かに佇んでいました。
★この暑い時期でも、何人かの登山者で賑わう人気のスポット。
★大汗をかいて、真夏の山旅を楽しんできました。
昔、人と水が戦って、この里が滅びようとした時、竜神を夜叉ヶ池に封じ込んだ。竜神は、「自分は自由を求める気持が強いのだから、鐘を作って毎日三度ずつ鳴らし、決して池から出ないという約束を思いおこさせてほしい」と云って水底に沈んだ。山麓の鐘を日に三度つかなければ、夜叉ヶ池に封じ込められている竜神が暴れだすという言い伝えを破ったために、竜に村を滅ぼされてしまうという幻想と伝説の世界を一組の男女を絡めて描いた映画「夜叉ヶ池」。1979年に泉鏡花の戯曲を篠田正浩監督が映画化した。歌舞伎界の大スター・坂東玉三郎が世にも美しい化身を演じた姿が今でも脳裏に残っている。
今年の夏は雨が少ない。乾いた畑の草をむしりながら、15年ぶりに夜叉ヶ池に行こうと思い立った。国道303号線で揖斐川町へ。滋賀県境間近の川上から右折して夜叉ヶ池への道に入る。ここから池までは約10kmあり、道も細い。天気がよく釣り人など多くの車が入っており、対向車に注意しながら走った。
トイレの建物が現れ、広い駐車場に到着。10台ほどの車が停まっており、この猛暑の時期でも人気スポットである。登山口は駐車場の上部にある。登山届けを提出してスタート。いきなり下って谷に向かう。タマアジサイの水色の花が美しい。小さな流れを越え、しっかりした木製の橋を渡る。
登り返して再び下る。アカヤマドリやチチタケなどキノコを見ながら、再び木橋を渡る。ここから急斜面を登って谷川を渡り、さらに登っていくと右山のトラバース道となる。左は谷になっており、等高線に沿った道が夜叉壁直下まで続いている。ゆるやかなアップダウンがあり、また山側から流れる小さな谷をいくつか渡るが、道はよく踏まれており遊歩道といった感じである。ブナやミズナラなどの天然林が続き、時折、木々の切れ間から夜叉壁が見える。かなり遠くにあるような気がした。足下には、オクモミジハグマやヤマジノホトトギスが可憐な花をつけている。
少し大きめの谷で「く」の字に折り返したところで、池まで1500mの標示が吊り下げてある。さらにトラバース道を歩いて、先行の登山者を追い越す。下っていくと幽玄の滝に到着。滝の水量は少ないが、水は冷たく、手をつけると気持ちがいい。夜叉姫がこの滝で肌を清めたと言われ、遊歩道の新設によってこの幻の滝が発見されたとの標示があった。滝上部にはオニユリと思われるオレンジ色の百合の花が1輪咲いており、またシモツケソウの花も見られる。
しばらく右山で歩き、谷を渡って折り返す。谷を離れ、もう一度折り返すと、前方、目の前に岩山が立ちはだかる。その左の鞍部の向こう側が夜叉ヶ池であり、このトラバース道の突き当たりから夜叉壁の登りとなる。下山者に挨拶をしながら、トラバース道を進む。右の谷の先には昇竜の滝が岩肌を流れ落ちている。
先行の登山者を追って、いよいよ夜叉ヶ池名物の夜叉壁に取り付く。ストックをたたんでザックに付け、ロープを握って岩場をクリア。頭上からは真夏の太陽が照りつけ、岩も熱い。岩肌に張り付いたオトギリソウの黄色い小さな花が美しい。
右方向に下って、右に小さな滝を見ながら、夜叉壁最長のロープ場へ。草付きの岩壁を、足場を選びながら登る。岩壁からは水がしみ出ているところがあり、モウセンゴケが見られた。シモツケソウが美しい花を咲かせている。見上げれば青空に浮かぶ白い雲が眩しい。後方には、今歩いてきた谷が見下ろせる。
涸れた谷のような石が転がる道を登る。木陰がなく、照りつける太陽の暑さでさすがにバテてきた。池まではもうひと登りであるが、わずかな木陰に腰を下ろして水分補給。ひと息ついで、ザレた道を登り詰めると稜線に出た。池の縁に立っているが、樹木で池は見えない。
樹木の中に向かって右に階段が作ってあったが、池に下りれるような雰囲気ではない。さらに西のピークに向かって登ってみたが、池への道はない。階段まで戻って、樹木のトンネルのようなところを、枝に頭をぶつけないようにして下っていくと池が現れた。以前は池の岸まで下りれたが、現在では池を保全するため、池の周囲の半分に木道が作られ、この木道から池を眺める。
鏡のような池は周囲の木々と青い空に浮かぶ白い雲を映して、静かに佇んでいる。昔と変わらない光景である。水際にはイモリが見られたが、水辺に近寄れないことから小さなヤシャゲンゴロウは確認できなかった。木道を時計回りに歩いて行くと石碑があり、さらに直進すれば福井県側からの登山道となる。また、木道の終点近くにはひな壇のような休息所があり、2人が休んでみえた。1人は監視員の方のようだ。
木陰の昼食場所は少なく、入り口付近のわずかな木陰で昼食にする。夜叉ヶ池は自炊禁止になっており、持ってきた冷やしソバを食べた。昼食の後、石碑まで戻って写真を撮った。福井県側から登ってきた男女に、登山道の状況を聞き、次回は福井県側から登ってみたいと思った。
下山する前に、西側のピークに少し登って夜叉ヶ池全体の写真を撮った。ここにこのような池ができるのが不思議な気がした。実に神秘的な池であり、夜叉姫伝説が生まれた理由がわかるような気がする。池を後に登ってきた道を下った。夜叉壁を慎重に下り、緑のトンネルを軽快に歩いた。午後になっても池を目指す登山者何人かに出会った。真夏でも人気のスポットである。紅葉の時期には大勢の登山者が訪れるに違いない。
夜叉ヶ池に行って以降、龍神に願いが通じたのか、雨の日が増えてきた。畑の作物が生き返った。
★夜叉ヶ池の植物
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