トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり 点線は推定トレース 

夕森山 (1597m 中津川市) 2009.10.18 曇り・晴れ 2人

林道の登山口(8:52)→最終水場(9:46)→稜線(10:28)→夕森山山頂(11:03-12:35)→稜線分岐点(12:57)→1406mピーク(13:10-13:12)→稜線分岐点(13:25)→最終水場(13:53)→不動滝分岐点(14:22)→登山口(14:34)

 今年、高時山に登ったときに、夕森山が目の前に見えた。夕森山の標高は1600m程で、高時山と同じクラスの山であり、登りたい山の1つに加えた。この秋、カッペさん企画で夕森山のオフ会が計画されたが、都合がつかず参加できなかった。紅葉前線が1500mほどまで下りてきたことから、この休みは夕森山に登ることに。登山口は付知峡の不動滝にある。

 国道41号線を北上し、白川口駅手前から右折して白川町、東白川村を抜けて加子母村万賀の交差点に出て右折。4kmほど南下して、付知峡口の信号交差点を左折。この先、2ヵ所ほど分岐があるが、不動滝の標示に従う。登山口は不動滝にもあるが、手前の林道を上がったところにも登山口がある。不動滝が近づいた辺りで、左側の林道に注意して走ると、舗装された林道の入口に夕森山登山口の標示を見つけた。とりあえず、不動滝の駐車場まで直進して、トイレに寄る。大きな駐車場に車は少なく、人影はない。
 
 引き返して、林道に入り左へ大きく迂回して折り返し、台風で落ちた木の枝が散乱する狭い道を走ると、折り返しのカーブが現れ、夕森山登山口の「→」がカーブから分岐する草付きの林道に立っている。ここで車の向きを変えて、路肩の草むらに駐車。3台ほど駐車可能。他に車はない。色づき始めた木々を見ながら、登山道に入る。

 足元にセンブリの小さな白い花を見つけた。さらに、小型のハグマの群落が見られた。葉の形が亀に似ていることからキッコウハグマという名前がついている。左山で10分ほど歩くと、尾根を巻き、直角に向きを変える。この尾根に薄い道が上がっており、赤テープも見られた。地図を見ると、この尾根を登れば1406mピークの西の稜線に到達するようだが、明確な道があるかどうか分からない。

 人工林の中、なだらかな道を歩く。人工林ではあるが、林床にはシロモジなどの黄色く色づいた潅木が見られた。やがて、暗い人工林となり、苔むした岩の多い道となる。この辺りに不動滝に下る分岐点があったが、往路では見落とした。林床にはたくさんのオシダが大きな葉を広げ、癒しの光景が広がる。水の音が大きくなり、右側下方から谷川が近づいてきた。

 谷のような道の地面には台風で散ったたくさんのヒノキの葉が落ちている。右に滝を見ながらホオノキやトチノキの落ち葉を踏んで歩く。しっとりとした谷沿いの道は深山に踏み込んだようなすばらしい雰囲気がある。夏にはヤマビルが出るというのもうなずける道だ。
 
 前方に登山者が見えた。登山口に車がなかったことから、不動滝から登ってきた人のようだ。クリを拾ってみえた。男性に挨拶をして追い抜く。さらに前方に数人の登山者がみえた。3人の登山者の後について歩く。すぐ前を歩く白髪の女性は高齢でありながら、軽快な歩きぶりである。

 苔の生えた木の橋を渡り、オシダの道を歩く。右手には谷が迫り、この辺りは天然林となっている。「いい香りがする」と前を歩く女性の話し声が聞こえてきた。カラメルのような香りが漂っている。足元に落ちている丸い葉はカツラであり、この木の香りである。前を歩く女性が、我々が歩いていることに驚いて道を譲っていただいた。同じパーティのメンバーが後ろを歩いていると思ってみえたようだ。さらに先を歩く登山者5名にも道を譲ってもらう。後に、追い抜いた9人が同じパーティの人であることが分かった。そして、さらに驚くべき話を聞くことになる。

 一旦、谷を離れてスギ林をジグザグと登り、再び谷沿いを歩く。暑くなったので、一休みして、シャツを脱ぎ、シャリバテ防止にパンを食べる。休息後、美しいオシダの群落を見ながら歩くと、水場の標示。谷の水を汲むことができる最終水場であり、ここから谷を離れる。

 スギ林を右山でゆるやかに登っていく。シロモジの黄色い紅葉が美しい。尾根を巻いて、涸れた急峻な谷をトラバースする。この辺りの植林は倒木が多く、荒廃している。この先で急斜面のジグザク道に取り付き、高度を稼ぐ。ササが現れ、ササの緑とシロモジの黄色との競演を頭上に見て左へトラバースしていくと、大きな枯れた木の株があり、ここから折り返すように尾根歩きとなる。

 急斜面のジグザグをこなし、岩の多い人工林を直登する。尾根道から左山で歩き、大きな株を道脇に見てさらに登ると、前方に再び大きな株が見えてきた。この付近には板取にある株杉のようなものが見られる。この大株で折り返すように歩くと、ここから上は天然林となる。カラマツが多く、黄色くなり始めたところである。まるで初雪のようにカラマツの葉が落ちてくる。気持のいいトラバース道だ。カラマツの落ち葉を頭に乗せたヌメリイグチが美味しそうだ。

 草付きの折り返し道が続く。散ったばかりのウリハダカエデの葉が地面を染める。次第に稜線が近づいてくるのが分かる。樹間から南が開け、遠くの山並みが見えた。台風で倒れたカラマツの下を潜って、稜線に出た。標識に従って右へ向う。美しく紅葉した稜線をなだらかに歩くと、樹間から夕森山の大きなピークが望めた。まだかなりの登りが待ち構えている。僅かに下り丸木の階段を登り返し、平坦な道を歩く。切り開きから南の展望を見ながら歩くと、シラカバの林とカエデの紅葉がマッチした美しい空間を通る。その向こうに夕森山のピラミッドが近づいてきた。台風の影響で、カエデの葉がかなり少なくなっているのが残念。

 ヒノキの株を過ぎて、登りが始まる。草付きのジグザグ道を急緩繰り返す。稜線に出るがすぐに稜線の右側のトラバースとなり、このような道を繰り返す。稜線からは北側の展望が得られた。GPSを見ると、まだ標高差100mほど登らなければならないので、2回目の休憩をとる。ここでもパンを食べて5分ほど休憩した後、さらに続く斜面を登っていく。コンクリート柱や境界見出標を見ながら、少し下って、最後の直線の急登にかかる。草付きの道の上には紅葉したカエデの門。ほとんど葉を落としたシラカバの木々を両脇に、ゆっくりと登って、鉄塔の立つ山頂に着いた。

 思ったよりも早く2時間10分ほどで登頂できた。山頂には小さなお社と錆びた鉄塔があり、背丈の低いイネ科の草で覆われていた。まずは周囲の景色を眺める。北には山頂を雲に隠した御嶽山がかすかに見えた。南にはいくつかの山並みの中に二ツ森山が望めた。北西には樹木の間から高時山、右へ続く唐塩山。この夏に歩いた稜線が目の前にある。錆びた鉄塔に梯子があったが、ロープで囲まれ登らないようにとの注意書きがある。北には建物の残骸とみられる錆びたトタン板が放置されていた。

 夕森山と書かれたプレートを持って写真を撮った後、御嶽山の見える位置に腰を下ろしてランチにする。メニューはおでんとドライカレー。谷で追い越した9人のパーティが山頂に到着して、賑やかになった。愛知県からみえた皆さんだった。谷でクリを拾ってみえた方はキノコにも詳しく、採集したクリタケやヌメリイグチ、ウスヒラタケなどを見せていただいた。フェイジョアという珍しい果物もいただいた。
 
 リーダーの男性から、「この人はいくつだと思いますか?」と、白髪の女性の年齢を聞かれた。何と81歳だった。これには驚いた。山頂にリーダーと一緒に一番乗りしたことからも、この歳でこの健脚とは・・・。日ごろからトレーニングをしているそうで、標高差1000mを3時間で登る体力にはただ驚くばかり。そんな話をしているうちに、御嶽山を覆っていた雲が消え、少し冠雪をした山頂を見ることができた。御岳をバックに交互に写真撮影して、一足先に下山開始。

 稜線を離脱する分岐点まで戻って、この先の稜線上にある1406mピークに寄り道することに。一旦ゆるやかに下って登り返す。稜線には踏み跡があり、多少ササがうるさいがヤブ状態ではなく、歩く障害にはならない。登り返しはわずか。登りにかかると左から人工林が稜線まで上がってきており、この状態が1406mピークまで続いていた。分岐から15分弱で樹林の中のピークに着いた。東には木々の間から夕森山が見える。道はさらに稜線上に続いていた。すぐに登ってきた道を下り、分岐点から稜線を離れて、カラマツ林を下った。

 稜線から15分ほど下ったところで、山頂で一緒だった団体の皆さんに追いついた。先に下った我々が後ろから下りてきたことにびっくりされた。道を譲ってもらい、どんどん下っていく。最終水場のすぐ下で登山道にうごめくヘビを見つけた。身体を何度も回転させて苦しんでいるように見えた。よく見ると、イモリを飲み込んでいるところだ。後方から下ってきた男性にマムシだと教えてもらったが、明確な銭型模様がないことから、アオダイショウの幼蛇かもしれない。
 
 まだ2時だというのに、かなり暗くなった谷を下っていく。と、雨が降り始めた。前回の御池岳同様、天気予報が外れたようだ。この先、傘をさして歩ける道なので、ザックカバーをかけて傘をさした。往路で気がつかなかった不動滝の分岐点を確認して、雨の中を駐車地点まで戻った。林道に出ると、いつの間にか雨が止み、青空が見え始めていた。

 不動滝駐車場まで戻ってびっくり。駐車場は観光客の車で埋まり、何台かの観光バスも停まっている。朝の閑散とした光景からは想像できない賑わいだ。これほどの名所だとは思わなかった。観光客で賑わうシャクナゲ群生地の遊歩道を下り、観音滝を見て、ゴウゴウと音を立てる不動滝を見下ろした。不動明王で手を合わせ、さらに吊橋を渡って谷に下りて仙樽の滝へ。谷の縁に咲く満開のダイモンジソウが印象的だった。車に戻って靴を履き替えて、不動滝を後にした。

 夕森山の自慢は何と言っても山頂から見る目の前の御嶽山である。高時山と同様に、ここから見る御嶽山はすばらしい。そして、谷沿いの潤ったオシダの道も、この山ならではの美しい光景である。道は明瞭で誤るようなことはないが、石や木の根が露出した部分が多く、滑りやすいので注意が必要。

 帰路、国道に出る手前から、夕森山の三角形が望めた。先ほど雨が降ったとは思えない青空が広がっていた。
★夕森山からの展望と植物


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