北穂高岳〜涸沢岳
北穂高岳〜涸沢岳  (3106m、3110m) 2003.8.2〜8.4 晴れ 2人

<1日目>
平湯アカンダナ駐車場(5:03)→5:25発上高地行きバス→上高地(6:02)→明神(6:56-7:06)→徳沢(7:48-8:00)→横尾(8:55-9:20)→本谷橋【昼食】(10:37-11:20)→涸沢ヒュッテ(13:18)
<2日目>
涸沢テント場(5:43)→南稜コル(7:16)→涸沢岳分岐(8:45)→北穂山頂・北穂高小屋(8:56-9:46)→涸沢岳北鞍部(11:08)→【昼食(30分程度)】→涸沢岳山頂(12:42-13:00)→穂高岳山荘(13:19-13:45)→ザイティングラード取り付き(15:12-15:18)→涸沢小屋(16:00)→涸沢テント場(16:10)
<3日目>
涸沢テント場(8:58)→本谷橋(10:01-10:09)→横尾【昼食】(11:09-11:52)→徳沢(12:53-13:04)→明神(13:50-14:05)→上高地河童橋(14:45)

 毎年、恒例の2泊3日の夏山。今年は涸沢でテント泊と決めていたことから、登る山を北穂高岳とした。天候に恵まれれば、涸沢岳までの石稜歩きもしてみたい。山行直前に、同じ町内のHさん(簗谷山で偶然出会った山歩きのベテラン)も北穂に出かけると聞いたので涸沢で落ち合うことにした。

 梅雨明け後もぐずついた天気は8月に入ってようやく安定したらしく、週間予報はお日様マークが並んだ。8月1日の20時頃、岐阜市を出発。土砂降りの中、平湯トンネルを抜けて、いつものように安房峠入り口のトイレのある駐車場で車内泊。雨は明け方まで降り続いた。

<1日目>
 4時過ぎ、携帯のアラームが鳴った。雨はやんだが、笠ヶ岳は雲の中。天気を心配しながら、5時前にアカンダナ駐車場に車を止めた。(1日500円) 始発のバスは5時だと思っていたが、4時50分であり、やむを得ず30分待って次のバスに乗った。半分程度の乗車率で、大半が上高地散策の観光客であった。

 上高地は朝6時にかなりの人出。川霧に包まれた幻想的な河童橋を通り横尾を目指す。いつもの道を準備運動の3時間である。穂高連峰は雲の中。ここを今年の5月はじめに歩いたときにはニリンソウが咲き始めたばかりであったが、今ではすっかり夏の花に入れ替わっている。メタカラコウ、ソバナ、ホタルブクロ、キツリフネ、オトギリソウ、ボタングサ、センジュガンピ、カニコウモリなど場所によっていろいろな花が次々と現れ、退屈しない。地味なランも2・3ヶ所で見つけた。

 明神、徳沢で小休止。梅雨明け後の週末とあって、この日に入山するパーティーは多い。横尾までほぼコースタイムで到着。ここで水を補給して、登山道に入る。上部を雲に隠した屏風岩を左に見ながら樹林帯へ。マイズルソウはすでに実をつけている。一旦、川沿いに出て、再び樹林帯に入る。

 大きな登りもなく、涸沢から下山してくる登山者と挨拶を交わしながら歩く。荷物が重くてつらい歩きになるかと思っていたが、それほどでもなく、花を観察しながらの余裕。イチヤクソウの群落やツバメオモトの真っ青な実がきれいだ。やがて谷川の音が大きくなり、吊り橋に出た。本谷橋である。11時前であるが、河原では大勢の登山者が昼食中。我々もこれからの本格的な登りに備えてラーメンの昼食にした。ストーブにコッヘルでの昼食組は我々だけであったのは意外。早々と昼食を済ませるパーティーが多い中、のんびりとランチを楽しんだ。

 本谷橋からは石の多い坂を登り、谷を離れる。苦しい登りが続く。やがて道は緩やかになり、樹間からは前方に前穂など涸沢方面の山が見えるようになる。石が筋状に流れ落ちた押し出しをいくつか渡る。白い小さな花がたくさんある。名前が分からなかったので、写真を撮っていると、下山してきた植物の詳しい方に「ズダヤクシュ」だと教えていただいた。この植物は長野県では喘息の薬になるそうで、「ズダ」とは喘息を意味するそうだ。勉強になった。マイズルソウやゴゼンタチバナもこの辺りでは花が真っ盛り。カエデの仲間であるオガラバナが質素な花を立ち上げている。2年前にはキヌガサソウが咲いていたのを記憶しているが、今回は見つけることができなかった。

 やがて、傾斜が増し、ナナカマドが増えてくると、涸沢は近い。いつの間にか雲が消え、北穂から前穂までがぐるりと見渡せる。2年前には雪渓があったが、今年は雪がない。キバナコマノツメがたくさん咲いてきれいだ。「涸沢ヒュッテは近い」と思う気持ちがペースを狂わせる。なかなか着かず、足も止まりがち。雪渓が現れ、かなりバテ気味に雪の上を横断。後方からやって来た若者のパーティーも「もうすぐビールだ」と頑張っている。

 本谷橋から2時間でヒュッテ到着。テントの設営よりもまずはビール。最高においしい。ヒュッテのテラスからは、巨大なカールとそれを囲む山々が美しい。日本にこんな雄大な世界があるとは、日常生活の中では全く想像できない。テント場の中央にあるテント受付所で受け付けをした。1人1泊500円。テントやシュラフのレンタルも可能。

 許可証をもらい、幕営の場所を探す。すでに100近くのテントが張られている。この岩石地帯にテントを張れるような場所があるのかと思っていたが、平らな場所がいくつもある。3人用のテントが張れる広さで、起伏の少ない場所を探した。ちょうど受付の近くによい場所があった。まだ少し雪が残っている。ここに決め、雪をどけていると、隣の方が食料を保存しておくために雪がほしいとのこと。なるほど、周りにいっぱいある雪はこういう使い方もあるものだ。ウチもキュウリやネギ、卵など冷やそうと思っていたが、あれこれやっているうちに冷やすのを忘れてしまった。

 テント設営が終わった頃、「オーイ」という声。Hさんご夫妻であった。我々より1時間ほど後に着いたそうだ。ヒュッテのテラスに移動し、差し入れしていただいたビールで乾杯。5時ころまで山談義。Hさんは今日は涸沢ヒュッテ、明日は北穂高小屋に泊まるとのこと。我々はここでテント2泊であることから、明後日にここで落ち合うこととした。

 夕食は、ご飯、みそ汁、缶詰、ひじき、サラダなどなど。α米は今1つ。軽いだけがメリット。暗くなる前に明日の準備をした。巨大な穂高連峰に囲まれて、暮れゆく涸沢はすばらしい。この大地と一体になった感覚は山小屋泊まりでは分からなかった。こんな体験ができたことだけでも、今回の山行は満足である。ごつごつした岩を避け、寝心地のよい場所を確保して、早めにシュラフに入った。

 0時過ぎに風の音で目が覚めた。タープが音を立てている。ファスナーを下ろして顔を出してみると、下の本谷方向から白いガスの固まりが超スピードで吹き上がり、テント場の上をかすめていく。見上げれば穂高連峰から天の川が流れ、夏の夜の大三角形が輝いている。北極星が北穂の右に輝き、涸沢の丸い空を夏の星座が埋め尽くしている。大きな火星がまばたき1つせず赤く輝いていた。星明かりのせいか、周りの山もよく見えた。幻想的な光景を10分ほど眺めていた。テント泊ならではの体験である。(つづく
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