三俣蓮華岳・双六岳 2日目
トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号)
三俣蓮華岳・双六岳 2日目 (2841m 2860m 高山市) 2015.9.4〜9.6 雨・曇り・晴れ 4人
<9月5日 晴れ>
鏡平山荘(5:59)→弓折乗越(6:53)→花見平(7:12)→双六小屋(8:07-8:23)→巻き道分岐(8:43)→三俣峠・三俣山荘分岐点(10:20)→三俣蓮華岳山頂(10:47-11:15)→丸山山頂(11:44)→双六岳山頂(12:35-13:47)→巻き道分岐点(14:31)→双六小屋(14:45)
午前4時を過ぎると、山小屋はざわめき始める。早起きしたTOMUさんから「槍が見えますよ」と聞いて、ヘッドランプを持って外に出る。山荘の前から、紺色に染まる空を背景にシルエットの槍ヶ岳が見えた。槍ヶ岳山荘の明かりも見える。
ヘッドランプを付けて鏡池まで行ってみる。霜できらきら輝いている木道を山小屋のスリッパで滑らないように歩いて池へ。鏡池からは紺色の空に槍ヶ岳が美しいシルエットを見せる。西鎌尾根の上に一直線の飛行機雲が横切り、槍の穂のすぐ左上に明けの明星が輝く。この青一色の世界が池に映って、異次元の世界が目の前に広がる。大感動の中、シャッターを切った。陽が上るまで見ていたかったが、朝食の時間になったので山荘に戻る。
5時過ぎに食堂へ。すでに団体さんは朝食を済ませており、我々は遅いほうだった。6時出発を目標に、身支度をした。山荘の玄関を出ると、これから登る稜線を朝日がオレンジ色に染めている。山荘を後に、池のほとりの木道を歩き、左に向きを変えて山に取り付く。ナナカマドの赤い実が美しい。
日向に出ると、槍の左に真っ白な太陽が燦然と輝く。大キレットから差し込む光の帯が奥丸山の頭上を通り抜ける。焼岳や乗鞍岳が頭をもたげ始めた。前方の緑の峰には、これから歩く登山道が左から右上の弓折乗越に伸び、登山者が小さく見えた。朝日を浴び、絶景の中を歩く。
道は「弓折中段」と書かれた小さな池のところで時計回りに向きを変え、左山となる。ベニバナイチゴやミヤマシシウドが咲く明るい道が続き、槍・穂高の展望が途切れることはない。
展望を楽しみながら登り、鏡平から約1時間で大勢の登山者が休息している弓折乗越に到着。ノンストップで右の稜線を登る。振り向けば、登山者が集う弓折乗越の下には鏡平山荘の赤い屋根や鏡池が、その向こうには陽が当たり始めた奥丸山、そして鋸状の穂高の峰が連なる。笠ヶ岳への稜線の道がうねって弓折岳、大ノマ岳、抜戸岳に続いている。
目の前にあるピークを目指す。前方の朝日が眩しい。登り詰めて、道から外れた狭いピークの頂きに立って、その展望に息を飲む。これから目指す双六岳が目の前に緑の巨体を横たえる。その右には鷲羽岳が小さく見えた。西には遠くに雲海が広がり、その先には白山がなだらかな輪郭を描く。
一人の単独男性がピークにやって来て、我々と同じように歓声を上げた。TOMUさんが万歳する彼の写真を撮る。聞けば、朝3時に新穂高を出たそうだ。7時にここまで歩いてきた健脚にはびっくり。SAKAさんは、今、どの辺りを歩いているのだろうかと、思いながらピークを後にした。
この後、なだらかなアップダウンの稜線歩きが続く。前方の西鎌尾根の長い稜線が槍に向かって伸びている。反対側には双六岳。このルートの最大の絶景ポイントがこの稜線である。広い砂地が目の前に広がった。雨水により不思議な起伏ができている。「地球ではない惑星に来たようだ」とTOMUさん。ここが花見平らと言われる場所であり、砂地の周辺にはヨツバシオガマやウサギギクなどが咲いていた。
さらに稜線を進むと、樅沢岳や鷲羽岳がぐんぐん大きくなっていく。チシマギキョウやミヤマリンドウを見て、右側が切れ落ちた砂礫の崖ぷちを歩き、急斜面を下ってベンチを通過。クロユリの群生地では、クロユリの実を見ることができた。後方には笠ヶ岳の頭が見え始めた。
道は稜線を左に外して、ハイマツの斜面を谷に向かって下っていく。谷の間には鷲羽岳。その手前に赤い双六小屋が見える。小屋に向かってまっすぐに下り、広い谷に下りて、テント場を通過し双六小屋に到着。今日の宿泊場所である。スタッフの皆さんは小屋の屋根の上で布団干しに忙しい。
チェックインは双六岳から下りて行うことにし、トイレに寄って小屋前のテーブルで小休止。15分ほど休憩して、三俣蓮華岳と双六岳の周回の一歩を踏み出す。まずはハイマツの道に取り付く。前方の丸い山の輪郭の上には青空が広がり高層雲が秋を告げ、白い半月が浮かんでいる。振り向けば、樅沢岳が大きい。槍は樅沢岳に隠れて見えないが、穂高の峰はよく見える。また、今朝、歩いてきた稜線や双六小屋手前のハイマツの道も見えた。
小屋から20分ほどでハイマツの斜面を登り切って三俣山荘巻道の分岐点に到着。先に三俣蓮華岳に登り、双六岳に戻る計画であり、ここは巻道へ。左から正面に向かって双六岳、丸山、三俣蓮華岳と帰路歩く稜線が続く。これから登る三俣蓮華岳が遥か遠くに見える。そして、前方には鷲羽岳や水晶岳が美しい。後方には樅沢岳に角が生えたように槍が姿を現した。
ミヤマリンドウの可憐な花を見ながらなだらかな道を歩く。ゆるやかに、時計と反対周りに双六岳を巻いていく。回り込む辺りで、派生した道に入り込みかけたが、軌道修正。丸山が近づき、前方には丸山の裾野を横切る巻道が見える。かなり下らなければと思っていると、道は石だらけの急斜面の谷状の道となった。慎重に下っていると、男女2人とすれ違った。聞けば、今朝、双六小屋を出て双六岳と三俣蓮華岳を踏んできたとのこと。
急斜面を下り終えると小川を渡った。上流を見上げると丸山にある雪渓から流れ出ている。冷たい水を飲んで生き返り、先を急ぐ。すれ違う登山者と挨拶を交わしながら丸山から伸びる尾根を目指して歩く。丸山に向かって登る団体が小さく見える。鏡平山荘を先に出発したパーティのようだ。三俣蓮華岳はこの尾根に隠れて見えない。
ハクサンフウロやウサギギク、ウメバチソウ、ミヤマリンドウなどこの時期でも多くの花が見られ、まさに花の道・緑の楽園である。尾根を乗り越える辺りからの展望も素晴らしく、いつしか双六岳はかなり後方に下がり、前方には白いなだらかな三俣蓮華岳が再び姿を現す。しかし、まだ遠い。
水場で小休止して水を補給。ロープの張られた道を登って行く。いよいよ三俣蓮華岳が目の前に迫ってきた。双六小屋を出てちょうど2時間で三俣山荘の分岐点である三俣峠に到着。槍ヶ岳をバックに3人で記念写真を撮った。
ここから、三俣蓮華への最後の登りに取り付く。石ころの道を登り、高度を稼ぐにつれて、鷲羽や水晶の展望が素晴らしい。鷲羽岳の三俣山荘も見える。チシマギキョウやイワツメクサの花を見ながら落石に注意して急斜面を登っていくと、前方から団体が下ってきた。皆さんは中道を歩いて三俣蓮華岳に登られたようだ。
急斜面を一歩一歩登り詰めて三俣蓮華岳山頂に到着。前方の視界が開けて、大歓声。一気に疲れが吹き飛ぶ。今まで見えなかった黒部五郎岳、北ノ股岳、薬師岳、雲ノ平、遠くには立山・剣・・・目の前に大パノラマが広がる。まさに北アルプスのど真ん中。山頂をグルグル回って、それぞれの山をバックに3人で写真を撮った。
双六岳山頂でSAKAさんとの待ち合わせがあるので、予定通りの時間に三俣蓮華岳山頂を出発。すぐ先でもう1つの山頂のようなところを通過。ここから下って目の前の丸山に向かう。向きを変えるたびに槍や笠、黒部五郎など正面に見える山が次々と移り変わる。
鞍部までは稜線の左側に道がつけられていることから、左下には今歩いてきた巻道が見下ろせた。素晴らしい展望の稜線歩きを楽しむ。鞍部からは稜線の右に道があり、黒部五郎や笠ヶ岳を見ながら登る。
丸山山頂は広く、山頂の標示も見当たらず、展望を楽しんでいるうちに山頂を通過。ハイマツ帯の中を下りにかかる。団体さんとすれ違った。巻道を通って三俣蓮華に登ってきたことを話すと、中道を通過したほうが早いと教えていただいた。巻道はアップダウンがあり、その通りかもしれないが、巻道の花畑や小川は魅力的である。
前方には目的地の双六岳が姿を現す。トウヤクリンドウを見ながら、緩やかに下っていく。再び稜線の左に出て、中道の分岐点を通過。ハイマツの道を緩やかに歩いて、双六岳山頂への登りにかかる。
白っぽい岩がゴロゴロしている急な斜面を一歩一歩登る。シャリバテで、きつい登りである。足を止めて振り向くと、緑の中に歩いてきた稜線の一本道。15年前に双六岳に登った時にもこの景色に感動したことを思い出した。時が流れても、雄大な大自然の美しさは変わらない。
双六岳山頂でSAKAさんと待ち合わせる時間を20分ほど過ぎて山頂に到着した。まず山頂でわずかな登山者の中、SAKAさんを探したが見つからない。携帯番号が登録してなかったことにも気づいた。やむを得ないので、山頂で昼食をとりながら待つことに。
ここからの展望は、何といっても砂礫の台地の向こうに見える槍ヶ岳。午後1時になろうとしているが、雲の湧き上がりがなく、槍の穂が時折ガスに隠される程度で、槍ヶ岳は美しい姿を見せる。
風が強くなったので、ジャケットを着て岩陰で昼食にする。砂礫の台地の一本道が見下ろせ、登ってくるSAKAさんを見つけることができる位置を確保。昼食のメニューはフランスパンとコーンスープ、缶詰やソーセージ、きゅうり・ミニトマト。最後はいつものようにコーヒーで閉めた。
SAKAさんは登ってこなかったが、タッキーさんなどリピート山中さんのスタッフが登ってみえた。ちょうどコーヒーを淹れたところだったので、コーヒーを差し入れした。1時間以上、昼食と展望を楽しんで、双六小屋に向かって下山開始。
砂礫の台地の向こうにそびえる槍ヶ岳に向かって歩く。今回の山旅はこの景色が見たくて登ってきたようなもの。周回の場合、三俣蓮華岳を先に登ると、この絶景を見ながら下ることができる。砂礫の台地は草紅葉が始まっており、砂漠を歩いているような錯覚に陥る。写真を何枚も取った。槍ヶ岳から北に鋸状の姿を見せる北鎌尾根は、加藤文太郎が吹雪に消えた尾根である。台地の真ん中で槍をバックに3人で記念撮影。
砂礫の台地を20分ほど歩いて急斜面の下りとなる。白い石が散らばる斜面を下る。眼下には中道や巻道が見える。岩場の斜面もあり、慎重に下って中道の分岐点を通過。ハイマツの道を歩いて、朝通過した巻道の分岐点へ。ここで周回終了。後はハイマツの中、双六小屋まで下った。
まずは、SAKAさんが到着しているかどうかを確認。受付をすると、SAKAさんが到着していること分かった。そこへSAKAさん登場。無事、合流できた。聞けば、双六小屋へは早い時間に到着したものの、体調がすぐれず、小屋に留まっていたとのこと。談話室に移動してウイスキーや焼酎で乾杯。夕食までゆっくりした。
今日もコンサートがあるので、夕食は4時半から。200人収容の小屋に70人ほどの宿泊で混雑はなく、夕食も1回転のみ。今日の夕食もボリュウムがあり豪華。缶ビールを飲みながら夕食を楽しんだ。関東からみえた隣の2名の男性と山談義。お二人は笠ヶ岳で1泊して、双六小屋が2泊目。過去の経験談に話が弾んだ。リピート山中コンサートには参加しないと言われたので、面白いことを伝えた。
夕食後、外に出てみると、雲が多くなってきたが、それでも鷲羽岳が見える。コンサートは6時半前に始まった。「コンサートを目的に双六岳に来た人は?」とのリピートさんの問いかけに、我々も含めて多くの人が手を挙げた。今年で12回目だけあって、リピーターも多い。昨夜の鏡平山荘の内容と同じかなと思っていたが、かなり異なっており、この日も大いに盛り上がった。歌に合わせて、サッポロ黒ラベルの販売も行われた。懐かしいフォークソングをみんなで歌って、コンサート終了。
サッポロ黒ラベルの歌が頭の中をグルグル回りながら、眠りについた。
3日目につづく
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